企業を顧客とするビジネスでは、繊細なお客様分析が必要です。
クライアントを一般的な分析ツールで客観視することは当然のことですが、お客様を理解する、ビジネスチャンスを切り開く、という観点からすると他者との差別化には至りません。
あるコロナ感染対策製品を扱う企業から、思わぬご相談をいただきました。元々は光触媒技術を駆使した製品開発メーカーでした。
その企業が、個人や家庭向けの光触媒による除菌装置を販売する通販を始めたいが困っている、とのこと。
お困り事は、ネット通販の決済システムが上手く契約できない、という内容です。何社かのカート運用会社と決済会社に仮申し込みをしたのですが、話が進まない、というのです。
詳しく状況を伺うと、メールで申し込みをしたところ、メールで申込書が送られてきたそうです。その文面には、「下記のURLからダウンロードしてお申込みください。ご契約の確定までには約1か月~2か月を必要とします」と書かれており、「ご不明な点はご遠慮なくお問合せください」と書かれているそうです。
まぁ、普通でしょうね。ですが、この企業では、この通販開始を2週間後にスタートさせたいという方針が経営層から示されたそうで、慌てているとのことでした。つまり、「2週間でなんとかオープンしたい」という要望をどのように伝えれば、決済会社が動いてくれるのかがわからない、というのです。
いくらメールで窮状を訴えても、「〇月〇日までにお申し込みをいただくと、以下のスケジュールになりますが、カード会社の審査があるので確約できるものではありません。また、申込書の記入内容に問題が生じますと、遅れることがあります」と返事が返ってくる、電話しても同じ事しか言わない、というのです。
何よりも、「こちらの困っていることをちゃんと聞いてもらえない」と怒っていました。「おそらく、どうせ無理だと決め込んでいるのでしょう」と感じたそうです。
その決済会社の担当者は若い人のようでしたが、この光触媒技術の会社が今、世界中から注目されている技術者集団であることすら、知らないのでしょう。
人気急上昇の会社だから、特別対応をすべきだ、とは言うつもりはありません。ですが、営業担当者がすべきことがあるはずです。まずは、お困りごとの情報をしっかりと伺い、「確約できない」という前提の中で、最善を尽くすための方法やアドバイスを説明することが必要です。
ここまでは当然のことです。
お困りごとをしっかりと伺う、お聞かせいただき、最善を尽くすための提案をするのが仕事であり、そのプロセスの満足感がCSです。
その結果、お客様も社内を調整してくださり、契約獲得に至ります。
コロナでリモートが続いていると、若手社員の「その先の一歩」ができないでいることに先輩上司が気づかずに終わっているのかもしれません。もう一度、若手社員の「聴き切る」技術、対応する姿勢について、見直しましょう。
「聴き切る」技術は、CS石川塾の動画で解説しています。