買い手・売り手の顧客接点の意義を再考する

 大手経営者が集う経済3団体賀詞交換会では、名の知れた企業の経営層がメディアのインタビューに答えていました。

 「再雇用者が実力を発揮できる組織」「働き方改革」「営業時間の短縮(コンビニ)」などがキーワード。深刻な人手不足から止む無く飛び出してきた言葉なのでしょうか。まるで、企業経営の課題をこの1点に絞り込んでいるような印象です。

 企業の目的は顧客を創り続けることのはずです。有名企業の経営層はどのように捉えているのでしょうか。言葉にして欲しい、と思うところです。

 唯一、スカイラークの谷会長&社長が「底辺の消費低迷が長期化している。雇用をもっと増やす努力を企業はすべきだ」と発言。
税金や社会保障のことを考えれば、おっしゃるとおりなのでしょうが、これまた疑問??

 「底辺」とは誰のこと?雇用は量の問題なの?経営層と社員が共有感をもった会話をすることは本当に難しいと思うばかりです。

 研修やコンサルの場で「会社の方針と現場との間に乖離がありまして。それを解決できないのは私どもの部門の力不足だと感じています」というお話を伺うことも少なくありません。

 『拝啓!有名企業の社長様、顧客はどうやって創り続けるのですか?』とお尋ねしたくなります。

 ふと、アパレル最大手のオンワードが営業利益12億円(55億円予測を大幅下方修正)という情報が頭に浮かびました。あれだけEC展開に力を入れても、それでも売り上げにつながる顧客は激減なのか・・。
大手紳士服チェーン店が閉店店舗をネットカフェに変える戦略にたどりついた理由がわかるような気がします。

 1月5日(日)、仕事帰りに初売りで賑わう新宿と立川の百貨店へ。
お客様の入りは「まずまず」なのですが、購入者が少ないのです。
新春のお財布売り場と言えば、初売りの目玉のはず。お買い得品のコーナーでは、手には取るが買わないお客様ばかり。

 そのお客様群に向けて、販売員さんが「こちらのお財布は人気ブランド」「この製品は上質な本革」「2万円以上の製品が8900円」「縁起の良いお色がいっぱい」と製品の良さやお得感をアピールし続けています。それでも、買わないのです。

 よ~くお客様の動作を見ていると、手にすら取っていないのです。
お財布を手にもって使い勝手を確かめてみよう、という動作がないのです。

 つまり、そもそも買う気はない。ということなのです。「必要性が無ければ買わない」という現実です。「衝動買い」という消費者行動が激減しているということなのでしょう。初売りというイベントに立ち寄ったというだけのことなのです。

 ですがこの状況を放置している売り場の責任はとても重いと感じます。
顧客の「今」を理解しない「売り子フレーズ」で声がけをしていることには何の成果も生まれません。今や顧客は「その場所で買い物をすることの必要性」を見出していなければ、買わないのです。

 ならば、売り場の顧客接点の意義を大きく変えるべきです。ECサイトでは、売り手しいては作り手(販売・営業&開発)のメッセージは伝わりづらいものです。

 企業側は、お客様の反応や意見をお聞かせいただくことができないまま、「買わないブランド」にされてしまうこともあります。これらがECビジネス、EC起点のビジネスの怖さでもあります。EC戦略を強化すれば売れる!は永遠の顧客創出なのでしょうか?

 ダイレクトな顧客接点は、このリスクを回避することを明らかな使命にすべきです。「売り子フレーズ」は「ブランドに興味をもっていただくためのメッセージフレーズ」に。

 そして、「売る」「対応する」から「お聞かせいただく」「コミュニケーションをとる」ための「場」に定義することが必要です。

 本来のカスタマーケアはこのブランドとのコミュニケーションにあるのではないでしょうか。ECビジネスの盲点、失ったリレーションをもう一度、企業は取り戻す時期です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です